埼玉と群馬、そして栃木が交わる県境あたりには、なぜか不思議な親近感がある。 
大きな観光地があるわけでもなく、誰かに自慢するような場所でもない。けれど、この三県境は、仕事や生活の中で何度も行き来してきた、自分にとってはとても身近な場所だ。 

埼玉県から群馬県、そして栃木県へ。 

車で走っていると、県境を示す看板がふと現れる。 
「もう群馬か」「あ、ここから栃木だな」 
そんな独り言をつぶやきながらハンドルを握るのが、いつもの流れだった。景色は大きく変わらないのに、県名が変わるだけで気持ちが切り替わる。その感覚が、この三県境でどこか不思議な気持ちになった。 

畑が広がる道、少し年季の入った倉庫、遠くに見える山の稜線。どこか素朴で、どこか落ち着く風景が続く。忙しい仕事の合間でも、この辺りを走ると少しだけ肩の力が抜ける気がする。 

そんな県境の近くに、たまたまあった定食屋。 
派手さはなく、昔ながらの食堂といった佇まい。のれんをくぐると、揚げ物の音と、出汁の香りが混じった空気が迎えてくれる。昼時には作業着姿の人が多く、みんな黙々と定食をかき込んでいた。 

注文は、安定のラーメンとチャーハン。トッピングでカレーのルーと目玉焼き。 
しっかり量があって、味も濃すぎず薄すぎず、働く体にちょうどいい。特別なご馳走ではないけれど、素朴で田舎の定食屋って感じがした。 

埼玉から群馬へ、群馬から栃木へ。 
行ったり来たりの毎日の中、昔ながらの定食屋はなんだか時間を忘れさせてくれた。  今でもこの三県境を通ると、あの定食屋のことを思い出す。 
通過点でしかなかった場所が、気づけば大切な記憶になっている。派手じゃないけれど、自分の生活の一コマのなった、そんな思い出。